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痴れ花枝
化野宅庭先にて―
「ああ、こいつだ。まあ化野には見えんだろうが、ここに居ついてる。」
「おー本当に居るのか、で、名は?」
「『痴レ花枝。』という。こうして木々に宿り、触れた動物の魂を食す蟲でな。食われた物は抜け殻のまま……魂はもちろん戻ってこない。」
「ほー。そうか……。そりゃ、難儀な蟲だ。」
「まあ、そういうことだ。だから、化野。」
「絶対嫌だ。」
「あのなぁ……除去は簡単なんだ。厄介な蟲だが、蟲煙草を吹かせば一瞬にして消え去ってしまう。」
「そんな事をしなくとも、春先になって温かくなれば消える蟲なんだろ。だったら!!」
「蟲を激愛するのも程々にしろよ、化野。分かってんのか?『雲喰み』の件で懲りたはずだ。どうなっても知らんぞ。」
「分かってる、ここは誰にも立ち入らせない。絶対、約束する。」
「……。」
「な、頼む、ギンコ。だから。」
「………立入禁止の囲い、作るの手伝ってやる。その代わり一晩泊めろ。」
「お、やっぱりお前は話が分かる奴だなぁ、ギンコ。」
「あんまり分かりたくもないが……。」
……みーたーいーな。
この後はご想像にお任せします(笑)
「謎の蟲名一欄」より『痴れ花枝(しれはなえだ)』
一蘭さま・投稿
08/06/11